植物の力を解き明かす ~ 春日教授が語る飼料作物研究の世界~

admin

今回は、信州大学農学部の春日重光教授に質問させていただきました。

飼料作物から果樹まで~幅広い研究分野~

テラリウム編集部:まず、先生の研究内容についてお聞かせください。

春日教授:私の研究は主に、ソルガムやライムギなどの飼料作物、洋ナシやヤマブドウなどの果樹類、そしてイチゴなどの育種、栽培、利用を中心に行っています。

似ているようで違う二つの作物

テラリウム編集部:ソルガムについて詳しくお聞きしたいのですが、トウモロコシとの違いは何でしょうか?

春日教授:ソルガムは茎の頂部に穂が着き、雌雄同花の完全花を持つ植物です。アフリカ東部が原産で、高温性の自殖性作物です。一方、トウモロコシは中南米原産の他殖性作物です。形態や生態的特徴が異なりますね。

ソルガム研究のきっかけ

テラリウム編集部:なぜソルガムなどの飼料作物研究に着手されたのでしょうか?

春日教授:実は、私が就職した長野県中信農業試験場に農林水産省指定ソルガム育種試験地が設置されており、その担当になったのがきっかけです。

テラリウム編集部:ソルガムの特徴や他の作物と異なる利点を教えていただけますか?

春日教授:ソルガムの最大の特徴は、植物としての多様性が極めて大きいことです。また、収量性や環境適応性も高いですね。利用方法も飼料、食用、緑肥、さらには花卉など、多用途に渡ります。

新品種誕生の舞台裏

テラリウム編集部:品種改良のプロセスについて、簡単にご説明いただけますか?

春日教授:大まかに5つの段階があります。まず育種目標を設定し、それに沿った育種素材を収集・評価します。次に交配選抜と選抜個体・系統の固定を行い、選抜した系統の生産力や地域適応性を評価します。最後に品種登録と普及事業を行います。ソルガムの場合、一代雑種育種法を用いるため、交配母本の選抜・育成が重要になります。

消化性と嗜好性に優れたソルガムの誕生

テラリウム編集部:この研究で明らかになったことはありますか?

春日教授:はい、消化性と嗜好性に優れた未出穂型ソルガムの育成に成功しました。

テラリウム編集部:研究の中で最も苦労した点は何でしょうか?

春日教授:育種母材の消化性や耐病性などの改良に苦心しました。これは、数をこなすことで乗り越えました。

テラリウム編集部:逆に、研究中で最も嬉しかった瞬間はありますか?

春日教授:農家の方から、「牛に給与した後、餌が残らない」と言われたときですね。実際の現場で役立っていることを実感できて、とても嬉しかったです。

畑から食卓まで~研究成果の広がり~

テラリウム編集部:この研究は、将来的に地域農業や家庭菜園にも活かされていくのでしょうか?

春日教授:地域農業、特に畜産分野では育成した品種の普及が進むことを願っています。家庭菜園では、緑肥や輪作のための素材として利用できると考えています。

テラリウム編集部:先生の研究は、世界規模の問題解決にもつながる可能性がありますか?

春日教授:そうなることを願っています。家畜飼料や食品原料、バイオマスエネルギー、土壌改良など、幅広い分野での利用を想定しています。

研究者としての原動力

テラリウム編集部:現在進められている研究について教えていただけますか?

春日教授:現在は退職に向けて、これまでの研究の整理や採種栽培を行っています。

テラリウム編集部:最後に、研究を通じて感じているやりがいや原動力について教えてください。

春日教授:植物や作物が教えてくれることが、私の原動力になっています。

お話を聞いた人のプロフィール

名前春日 重光
職位教授
所属組織農学部 農学生命科学科 植物資源科学コース 
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編集者・ライター
TERRARIUM編集部です。SDGsや環境に関連するコラムをお届けします。
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