クローンで広がる植物の不思議 ~酪農学園大学松山周平先生~

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今回は、酪農学園大学松山周平先生にお話を伺いました。知っているようで知らない、セイヨウタンポポについてお話を伺います。

テラリウム編集部: 橋本先生のセイヨウタンポポの研究について伺いたいと思います。まず、この研究に取り組まれたきっかけを教えていただけますか?

松山先生: はい。セイヨウタンポポはヨーロッパ原産の植物ですが、日本だけでなく世界中に広く分布しています。なぜこれほど広範囲に分布できているのか、その謎に興味を持ったことがきっかけです。

テラリウム編集部: なるほど。セイヨウタンポポの特徴として「アポミクシス」というものがあると伺いました。これについて詳しく教えていただけますか?

松山先生: アポミクシスは植物の増え方の一つで、受粉しなくても種子ができる現象です。通常の有性生殖とは異なり、親と遺伝的に同一のクローンの種子を大量に作り出すことができます。

ただし、ヨーロッパには通常の有性生殖で増えるセイヨウタンポポも存在します。日本をはじめ、広範囲に分布しているのは主にアポミクシス性のセイヨウタンポポです。

このアポミクシスという特性が、セイヨウタンポポの広範な分布を可能にしている要因の一つだと考えられています。

テラリウム編集部: それは驚きですね。アポミクシス性の植物が広範囲に分布できる理由はそこにあるのでしょうか?

松山先生: 一般的に、植物は環境に適応するために遺伝子を交換し進化していくと考えられてきました。しかし、アポミクシス性のセイヨウタンポポは、クローンの子孫を作るにもかかわらず広範囲に分布できている。この点が非常に興味深いのです。

実際には、アポミクシス性があってもそれほど広範囲に分布していない植物も多くあります。ただ、アポミクシス性のセイヨウタンポポなど一部のアポミクシス植物では、大量のクローン種子生産が分布拡大に役立ったと考えられます。

この特性が、どのように広範囲な分布につながったのか、そのメカニズムを解明することが私たちの研究の焦点となっています。

テラリウム編集部: 研究を通じて、どのようなことが明らかになったのでしょうか?

松山先生: 大阪での研究から、セイヨウタンポポは日本のタンポポと雑種を作っており、調査した緑地では雑種の方が元のセイヨウタンポポよりも多くなっていることがわかりました。また、セイヨウタンポポも雑種も、予想に反して遺伝子型が多様化していることも明らかになりました。

テラリウム編集部: それは興味深い発見ですね。研究の中で最も苦労された点はどのようなことでしょうか?

松山先生:実際に野外で雑種がどのくらいの確率で形成されているかを調べる際に苦労しました。2000個ほどの種子を調べて、わずか1つしか雑種が見つからず、方法が間違っているのではないかと不安になりました。しかし、根気よく続けることで、野外で実際に雑種が作られていることを確認できました。

テラリウム編集部: 粘り強く研究を続けられた結果、大切な発見につながったのですね。この研究は、今後どのような分野に生かされる可能性がありますか?

松山先生: アポミクシスという性質は農業分野で注目されています。栽培作物に応用することで、品種の維持や生産性向上に役立つ可能性があります。私の研究は直接的に農業に利用できるわけではありませんが、将来アポミクシス作物が開発された際に、自然植生への影響や注意点を考える上で役立つ知見になると考えています。

テラリウム編集部: 最後に、テラリウムの読者にメッセージをお願いします。

松山先生: 科学が進歩し、植物についても多くのことがわかってきていますが、身近な植物にもまだまだ未知の部分がたくさんあります。ぜひ身近な植物をよく観察してみてください。あなたにしかわからない発見があるかもしれませんよ。

名前松山 周平
職位准教授
所属組織静岡大学農学部生物資源科学科

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