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最先端技術を使った植物栽培の可能性 近畿大学 廣岡准教授にインタビュー

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今回は、近畿大学の廣岡義博准教授にインタビューしました。
廣岡准教授が注目する、植物科学の最先端を行く研究についてお話を伺います。

最新技術を用いた研究のきっかけ

テラリウム編集部:(以下、編集部):まずは、リモートセンシングとは何かお伺いできますか?

廣岡准教授:ああ、リモートセンシングですね。これは、対象物に直接触れることなく、離れた場所からその特性を観測・測定する技術のことです。これが植物研究の世界を一変させたんですよ。

廣岡准教授:植物科学の分野では、このリモートセンシング技術が革新的な役割を果たしています。例えば、サーモグラフィーカメラを使用して植物の体温を測定したり、衛星画像を利用して広範囲の植生状態を把握したりすることができます。

テラリウム編集部:目に見えないものが見えるようになるということですね!

廣岡准教授:この技術の最大の利点は、非破壊的であることです。つまり、植物にダメージを与えることなく、その健康状態やストレスレベルを評価できるのです。従来の方法では、植物の一部を採取して分析する必要がありましたが、リモートセンシングではそれが不要になります。

廣岡准教授:さらに、この技術は時系列データの収集にも優れています。定期的に同じ場所を観測することで、植物の成長過程や環境の変化を詳細に追跡することができるのです。

廣岡准教授:このように、リモートセンシングは植物科学や農業分野に革新をもたらし、より効率的で持続可能な農業実践につながる可能性を秘めています。

廣岡准教授:昔は植物の状態を調べるのに、実際に触ったり、時には傷つけたりする必要がありました。でも、リモートセンシングは全く違うアプローチなんです。

リモートセンシングの役割

編集部:では、この技術は実際の農業にどう役立っているんでしょうか?

廣岡准教授:そうですね、農業での活用は、植物のストレスを見つけるのが主な用途です。ポイント的に肥料や水分量などを測定することができます。つまり従来なら畑全体に水をまいていたところを、本当に必要な場所だけに水をやれば良いわけです。

編集部:それは効率的ですね!

廣岡准教授:そうなんです。しかも、これまでは植物の状態を調べるのに、実際に刈り取って分析する必要がありました。つまり、調べるために植物を傷つけていたんです。リモートセンシングなら、植物に優しく、かつ効率的に情報が得られるんですよ。

リモートセンシングの可能性は無限大

編集部:なるほど。では、この技術によって具体的に何が変わるんでしょうか?

廣岡准教授:大きな変化の一つは、肥料の使用方法です。従来は「全体的にまく」という考えでした。でも、リモートセンシングを使えば、ピンポイントで必要な量を与えられるんです。これは農家にとってはコスト削減になりますし、環境にも優しい。過剰な肥料が川や海に流れ出て環境を汚染する心配も減ります。

研究の苦労

編集部:素晴らしいですね。ところで、この研究で苦労されたことはありますか?

廣岡准教授:ああ、それは現地の農家の方々の理解を得ることでしたね。最初は「なにをするんだ?」という反応でした。でも、実際に効果を見せていくうちに、徐々に受け入れてもらえるようになりました。それに、研究当初は世間になじみがなかった「リモートセンシング」がだんだん周知されるようになり、興味を持ってもらえるようになったのも、研究をやっていてよかったと思いましたね。

編集部:そういった変化を感じられるのは研究者冥利に尽きますね。

廣岡准教授:まさにその通りです。特に最近は気候変動の影響で、植物が受けるストレスが増えています。だからこそ、この研究の重要性はますます高まっていると感じています。

廣岡准教授の研究のこれからの可能性

編集部:なるほど。では、この技術が実用化されたら、どんな分野で活躍すると思われますか?

廣岡准教授:やはり、食糧問題を抱える発展途上国での活用が期待されますね。また世の中には、人間からあまり食事に使われず超過状態で捨てられてしまう野菜や果物などもあります。そういった食糧も必要な量がはっきりとわかれば、それ以上生産することはなくなるので、食品ロスにつながります。つまり、スマートセンシングでは収穫量を増やせるだけでなく、限られた資源を無駄なく使えるようになります。

まだまだ残る研究の課題

編集部:この研究で、改善点などは見つかりましたか?

廣岡准教授:はい、イレギュラーへの対応が求められる場合への対応がまだまだなんです。雑草が急激に増加したり、急に天候が変わったりなど普段とは違う時の情報分析が正しくできるように改良したいですね。

廣岡准教授:これからの研究では、ただ画像やデータをとるだけではなく、植物の生育にとって何がいいかという指標作りを進めていきたいと考えています。AIなどの最新技術をここでも取り入れていければなと。

編集部:素晴らしい展望ですね。

廣岡准教授:ええ。そうすれば、現在研究を進めている稲やダイズだけでなく、多様な作物の生育に活かすことができ、さらに食糧難で苦しんでいる国に安定した食糧を供給できるようになるでしょう。

読者へのメッセージ

編集部:最後に、植物に興味を持つ読者へメッセージをお願いします。

廣岡准教授:植物は本当に面白い生き物です。人間が与える愛情に、目に見える形で応えてくれます。だからこそ、日々の変化をよく観察してほしいんです。そうすれば、植物との会話が始まりますよ。「今日は元気?」「水が欲しいな」なんて。そんな植物との対話を楽しんでいただければと思います。リモートセンシングは、その会話をさらに深める手助けになるんです。皆さんも、ぜひ植物との新しい関係を築いてみてください。

編集部:素晴らしいお話をありがとうございました。植物の世界がますます身近に感じられました!

お話を聞いた人のプロフィール

名前廣岡義博(ひろおかよしひろ)
職位准教授
所属組織近畿大学 農学部 農業生産科学科
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TERRARIUM編集部です。SDGsや環境に関連するコラムをお届けします。
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